こんにちは、Ayakaです。
今回は、大学ランキングで毎年ポーランドのトップを争う国立大学2校の比較を兼ねて、ポーランドの古都・クラクフにあるヤギェウォ大学を卒業された吉田祐美さんに、ポーランドの首都・ワルシャワにあるワルシャワ大学を卒業した筆者がインタビューをさせていただきました。
★外部参考リンク - ポーランドの大学ランキング★
>>Study in Poland: Top Universities, Cities, Rankings, Fees & Visa Details | Top Universities
>>Best universities in Poland | Times Higher Education (THE)
卒業年度はズレますが、祐美さんも筆者も国際関係学を学んだことは共通しています。
筆者が個人的に気になっていたヤギェウォ大学とワルシャワ大学、2校の違いについてもインタビューの中で聞いています。
IT人材や事業でも注目され始めたポーランドでの留学を、又、ポーランドのどの大学に留学しようか迷っている人の参考に少しでもなれば嬉しいです。
又、祐美さんはヤギェウォ大学卒業後、まだまだ他のヨーロッパの国々と比較して接点が少ないポーランドと日本の関わりを、文化面、ビジネス面から強めていこうと、学生会議の立ち上げ、一般社団法人化、起業等、実に数多くの活動をされています。
これら祐美さんの活動についても聞いてみたので、ポーランドに興味を持ってくださる方が増えるといいなと思っています。
尚、インタビュー内容は2020年6月のものです。何卒ご了承ください。
- ポーランド大卒×起業って何者!?
- 日本とポーランドの架け橋として
- ワルシャワ大学卒業生からヤギェウォ大学卒業生へ質問
- ポーランドでのあるある困った
- 正規留学中の学業
- 自由でいられるポーランド~フランスとの比較~
- 穴場!ポーランドの大学の魅力
- 今後の展望
ポーランド大卒×起業って何者!?
―今日はポーランドと日本で時差がある中、休日の朝からインタビューにご協力いただき、ありがとうございます。まずは祐美さんの自己紹介をお願いします。
2014年にポーランドのヤギェヴォ大学に正規留学をし、2017年に卒業しました。
その後、日本の大学院に入る為に一回日本帰ったんだけど、大学院へ行っている間に、朱花ちゃんたちと日本ポーランド学生会議を始めたんだ。
★あわせて読みたい★
2018年の夏に第一回日本ポーランド学生会議を開催して、同年12月に「もうちょっと活動を広げたいな」と思ったから、一般社団法人化したの。
あと、2019年が日本とポーランドの国交樹立100周年という記念すべき年だったから、様々な所からお声かけを頂いて、色んなプロジェクトやプログラムをさせていただいたんだよね。
それが結構楽しかったし、反響もあって手ごたえを感じられたから「ビジネス面でもやってみたい!」と思い始めて、2019年の4月に大学院を休学して、今ポーランドに在住してるの。
だから今(2020年6月)は休学して一年強経ったくらいだね。
―高校卒業後すぐは日本の大学に通っていらっしゃったものの、そこを辞めてまでもう一度他の大学に入り直すモチベーションはどこから来たんですか?
しかも、私(筆者)もよく聞かれるんですけど、ポーランドってあんまり皆選ばない所じゃないですか。
そうだね。
「日本の大学を辞めよう」って思ったきっかけは、2014年の1月~3月にアイスランドに行ったことだった。
―旅行ですか?
いや、ワーキングホリデーの短いバージョンみたいなので行ってね。
★あわせて読みたい★
そこでの生活で色んな国の人と交流する機会に恵まれたんだけど、出会った人の多くは、したいことを、したい時にしていたの。
正直に言うと、私が当時いた大学のフランス語学科にそこまで大きな思い入れがあったわけではなかったんだ。
アイスランドから日本に帰ると、ちょうど2年生になる時期だったんだけど、「一度辞めようかな。どうせ辞めるなら、国外に出てみようかな」ってふと思ったの。
帰った直後ということもあって、アイスランドがとっても好きだったから、ヨーロッパに行きたいと思ったんだけど、1つ問題があって・・・。
留学したい場合は、本当なら1年前くらいから準備始めないといけないの。
でも実は、大学を辞める決心が着いたのが2014年の6月だったから、普通は2015年の9月入学で出願準備を始めるべきだったんだけど、
「私もう19歳だし、この1年待ったら20歳になっちゃうのか。この1年無駄にはできないな」って思ったんだよね。
だから、6月から英語の試験を受け始めて、7月や8月ギリギ最後まで出願を受け付けてくれる所を必死で探して、ポーランドの大学に辿り着いたんだ。
他に、ハンガリーなどの大学も検討してた。
―その前からポーランドに関心があったとか、ポーランドと縁があったわけではなかったんですね。
全くだね(笑)
日本とポーランドの架け橋として
(一番左が祐美さん)
―ASAGAO有限会社(Sp. z o.o.)と一般社団法人、両方祐美さんが中心となって立ち上げられた組織ですが、それぞれが何をされているのか教えてください!
ASAGAOと一般社団法人は、行っていることも違うし、会計も分けているから、全くの別団体だと思ってもらっていいよ!
非営利事業をしているのが日本ポーランド青少年協会という一般社団法人で、ビジネスをしているのがASAGAOなの。
ただ両方とも、日本とポーランドを繋ぐことを目的に立ち上げた点では一致してる。
―ASAGAOではどんなビジネスをされてますか?
最初はイベント運営をさせていただいていたね。
東京にある福田会(ふくでんかい)という社会福祉法人が、ちょうど100年前に抑留されたポーランドの人たち735人を受け入れた、という背景があって、ポーランドと強い繋がりがあるの。
だから、福田会でポーランド現地での窓口業務をさせていただいたり。
あとは、日本製品をポーランドへ輸出するための営業、ポーランドの木製品を日本に卸すとか、主に日本とポーランドの輸出入に関わっている。
―一般社団法人はどんなことをされてますか?
ポーランドへの留学の相談を受け付けたり、
日本とポーランド両国の学校で、お互いの国について話す機会を頂いたりしてる。
あと、「ポーランド検定を作りませんか?」というお声がけを外部の方から頂いていて、その内容を作成をしたりと、主に文化的な方面で活動してるよ。
ワルシャワ大学卒業生からヤギェウォ大学卒業生へ質問
―私(筆者)の勝手な印象なんですけど、ヤギェウォ大学のキャンパスって小さくないですか?
そうかも!
ワルシャワ大学は、メイン通りにキャンパスが1つあって、理系の学部は別の所にキャンパスがある感じだよね?
―そうですね。
ワルシャワ大学は、工学系、医学系、金融系、心理学系はメインキャンパスとは違う所にキャンパスを持っているので、ワルシャワ中にいくつかキャンパスが広がっている感じです。
ヤギェウォ大学もキャンパスが分散しているって意味では同じかな。
でも、メインのキャンパスっていうのがはっきりしていないことが、ワルシャワ大学とのが違いかもしれない。
ヤギェウォ大学のメインキャンパスはクラクフ旧市街地に小さく1つあるんだけど、そこでは授業が無いんだよね。大学事務のオフィスとして使われているの。
あと、キャンパスというより、建物1つごとに1学部みたいになっているから、小さく感じるのかも。
ただ、ルチャイって所はクラクフの中心地から少し離れた所にあるIT系や理系の学部が集まっている場所なんだけど、アメリカの大学のキャンパスみたいにとっても広い!
「自転車で移動した方がいいんじゃないかな」ってくらいの広さなの!
―IT関係の話でいくと、ポーランドは人口に対するエンジニアの比率が大きいですよね。
やはり、ポーランドがコンピューターサイエンスやエンジニアの分野で強いというのは本当なんですか?
★外部参考記事★
>>街中にハッカソンのポスター? グローバルテック企業が注目を寄せるポーランド│GLOBITY
>>豊富なソフトウエア人材を武器にビジネス環境が急速に発達(ポーランド) | 欧州に学ぶ、スタートアップの今 - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
>>イベントレポート/ポーランドでエンジニアを採用する理由とは?|グロサイ(ふみだせ、グローバル採用。)
それは本当だと思う!
IT系の学部は人気だし、就職事情を考えても、ヤギェウォ大学のIT分野の学部やAGH科学技術大学を出ると、かなり選びたい放題。
―日本人もポーランドに来るなら、CSとか学びに来る人が増えればいいのにって思っちゃいます(笑)
私もそうすれば良かったかもしれないです。
ポーランドでのあるある困った
―ワルシャワ大学は大学の書類の手続きとかに不備があることが多かったんですよね。
正式な発表がきちんと生徒のメールに送られず、Facebookをしていない人もいるのに、重要情報がFacebook上である生徒から偶々流れてくる、みたいなことがあったり。
祐美さんが大学の手続き関係で苦労をされたことはありますか?
う~ん、私が居た時は大きく苦労したことは無かったと思う。
それでも、今回のコロナの件に関しては、2020年3月前半から後半にかけては物凄い勢いで情報が更新されていたと思うけど、「ホームページにも載っていないのに、Facebookには載ってる」みたいなことを、今実際にヤギェウォ大学に留学している子から聞いたことがあるよ。
―でも、祐美さんがヤギェウォ大学にいらっしゃった時は、大きなミスや曖昧な情報の錯綜はなく?
めちゃくちゃメールの返信が遅いことはあったよ(笑)
―あ~、それはポーランドにはつきものですね(笑)
ただ、私たちの学部は、一学年の生徒数が30人程度に対し担当者が2人と、小規模な学部だったから、結構アットホームな環境ではあった。
何か問題や不明点があれば、皆で聞きに行って、その場で解決して、後でグループに一斉送信して連絡してもらう、みたいなことはあったね。
正規留学中の学業
―祐美さんが受けた授業の中で最も印象に残っているものはどれですか?
私は国際関係学を学んでたけど、その中から更に3つの専攻に分かれてて、私は政治と文化(Politics Culture)を選んだんだよね。
2年生の後期から文化についての授業が多くなったんだけど、その中で、ポーランドの文化について、自分たちでどこかに体験しに行って、授業でその体験内容を発表する授業があったの。
ザリピエという、ポーランドの東の方にある小さい村にペアの子と二人で行ったんだけど、その村は、家の壁にポーランドのデザインで花が描いてある、とっても可愛い村ってことで有名なの。
もちろん、村は可愛くて感激したんだけど、授業とは全く関係ない所で凄い体験をしたよ。
実は帰りのバスを逃してしまって・・・。
ヤギェウォ大学のあるクラクフまでは相当な距離があるから一瞬どうしようかと思ったけど、二人で歩きながらヒッチハイクして、なんとか無事家に戻れた(笑)
―卒業論文は何について書かれました?
日本と中国と韓国の国際人権法の適用のされ方の違いについて書いたよ。
難民の方々が各国でどのような対応のされ方をしているか、についてを中心に書いたな。
★あわせて読みたい★
自由でいられるポーランド~フランスとの比較~
―私の代だけかもしれないですが、ワルシャワ大学の国際関係学科には、トルコからの学生が多かったんですよ。
ヤギェウォ大学には、ポーランド人学生以外で、どこ出身の学生が多かったですか?
圧倒的にウクライナ!
私のいた学部はウクライナ人が3割くらいだったように記憶してる。
―ワルシャワ大学は中国からの生徒もトルコからの生徒数と同じくらいいました。
そうなの!?
ヤギェウォ大学で、私の代の時は、インド人がいた他は、私が唯一の東アジア出身生徒だった。
―アジア人が少数派だと結構何やっても大丈夫、みたいなところがありません(笑)?
自分の国(日本)とポーランド、ヨーロッパを比べるだけで面白がって、興味持ってもらえる、みたいな。
インド人を除くと、アジア人一人だったから、ポジションとしてはめちゃくちゃ楽だったと思う。すぐ顔とか覚えてもらえるしね。
★あわせて読みたい★
―フランスにエラスムス制度を使って半年間交換留学されましたよね?ヨーロッパ内の2つの違う国で暮らしてみて、何か発見がありましたか?
生活の水準よりも、私はフランスでは、日本という国や日本人に対するステレオタイプを持って見られている感じがした。
フランスに留学している日本人の数は多いし、日常生活の中で日本食とかアニメとか日本文化に触れる機会が多いだろうから、フランスで暮らす人たちの中で『日本人』っていうイメージが割と出来上がってる、ように感じたね。
反対にポーランドには、良い意味でも悪い意味でも、日本人がどういう人で、どういう文化を持ってて、どういうものを食べてて、どういう宗教を持ってっていうイメージがほとんど無いじゃん?
だからポーランドでは、「あ、君はこういう性格なんだね。こういう考え方なんだね。」って、日本人っていう括りではなくて、吉田祐美という一個人として私を見てくれている感じがした。
日本人は、物静か、シャイと見られがちだけど、ポーランドでは、日本人に対するステレオタイプがまだ確立されていないから、「なんか君すっごい静かだね」みたいな。
―フランスなど、日本人のある程度いる社会(国)にいると、日本人のステレオタイプから外れる行動をすると、少し違う目で見られるのかもしれないですね。
そうかもね。
しかも外れるように努力するのが結構大変かも。
―生活の面では何か感じなかったですか?
もちろん食べ物も生活習慣も通貨も、フランスとポーランドの間で多少違うけど、
日本とポーランド、日本とフランスを比べた時と同じようには、ポーランドとフランスは違わないよね。
★あわせて読みたい★
穴場!ポーランドの大学の魅力
―祐美さん以外にヤギェウォ大学に正規留学していらっしゃる日本人はいました?
私の代の1つ上から学部が出来たから、私はその学部の二代目だったんだけど、私が最初の日本人で、同学年には他に日本人はいなかった。
私の下からは毎年一人ずつ日本人の正規留学生がいると聞いているけどね。
―卒業されたご本人に聞くのも何なんですけど、正直、ヤギェウォ大学はおすすめですか?
うん!おすすめ。
その人がどういう留学をしたいと思っているかにもよると思うけれど、
英語はそこそこ話せる、でも(ちょっと言い方は悪いけど)OxfordやHarvardに行くようなタイプではないけど留学がしたい!って人にはめちゃくちゃおすすめ。
極端な例だとは思うけど、元々Oxfordとかに行けるような英語力も学力もあるなら、そっちに行った方が学力的にも、周りのレベル的にも、自分のために良いよね。
でも、世界一の学歴レベルは求めていないけど、海外で挑戦してみたい!っていうような人にはおすすめかな。
★あわせて読みたい★ //
今後の展望
(右が祐美さん)
―最後に祐美さんの今後の展望をお聞かせいただければ幸いです。
これからビジネス面でポーランドはもっともっと伸びると思うんだよね。
今、日本企業のポーランド進出は盛んだし、ポーランドにも日本に進出したい企業は多い。
ただ、特に言語が壁になって断念してしまっている現実もある。
だから、特に言語面をサポートして日本とポーランドを繋げる役割をもっと果たしていきたいと思っています。
―言語の面は、ポーランド語と日本語間の訳が難しいとか、それらの言語が分かる人財が足りてないってことですか?
日本は、ビジネスレベル以上の外国語を使える人がまだまだ少ないじゃん?
―確かにそうですね。
ポーランド人のビジネスマンで「英語が無理です」って人はあまりいないと思うけど、彼らが日本に行きたくても、手続きが全て日本語だけの場合もあって、かなりハードルが高い。
日本についての情報も多くは得られないことが、大きくネックになっている場合もあると思う。
日本からポーランドへ進出する場合は、1人英語が話せる人がいればビジネス上の意思疎通が取れると思うけど、その逆が厳しいかな。
オフィスを開設したとしても、結局、取引先の営業担当の人が英語を話せないと、そこで全てビジネスが止まっちゃったりとか。
だから、特に言語面でのサポートをして、日本とポーランドを繋げる役割を果たしていきたいなと思ってます!
―今回は何から何まで赤裸々にお答えいただきありがとうございました!
祐美さんは留学経験者としてだけでなく、女性起業家としても、日本の若い人たちへの素敵なロールモデルです!
今後とも是非宜しくお願いします。
★祐美さんの活動・事業についてもっと知りたい方へ★
▼ASAGAO sp. z. o. o. へのリンク
▼日本ポーランド青少年協会へのリンク
★あわせて読みたい★