こんにちは、Ayakaです。
筆者が、ポーランドに住んでみたい方、ポーランドに留学したい方から頻繁に受ける質問が「ポーランドで英語、通じますか?」「ポーランド人って英語話せますか?」です。
留学生として首都・ワルシャワで2年生活した経験から、以下のように答えています。
「『通じる』のレベルによりますが、そもそもヨーロッパの国々で日常会話レベルの英語が通じない国は無いので、ポーランドの相当な田舎に行かない限り、20代~40代の人に英語が全く通じないことはありません。
又、あまり知られていないことですが、世界平均と比べてもポーランドの(特に若者の)英語力は高いので、学術レベルで英語が使える人も多くいます。
繰り返しになりますが、相当な地方へ行かない限り、日常生活で全く英語が通じないことはありません。
道端やバスで友人と英語で話していると、見知らぬ人から英語で話しかけられることがあります。」
ポーランド人の英語力の高さを証明する1つの指標として、世界中に語学学校を構えるEFが算出したこちらの英語能力指数ランキングがあります。
能力レベルが、非常に高い、高い、標準的、低い、非常に低いに分けられており、2019年度、ポーランドは、調査対象国100か国中、非常に高い(11位)です。
ちなみに日本は低い(53)、お隣の韓国(37)、台湾(38)、中国(40)は全て標準的に入っています。
私の留学生活最後の1年を過ごしたスペインは標準的(35)に入っています。
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ランキングを眺めるだけでも面白いので、是非元記事に飛んでみてくださいね。
▶こちら: EF EPI 2019 – EF 英語能力指数
もちろん、このランキングが全てではありませんが、実際に旅行、留学、移住してきて、ポーランド人の英語力の高さに驚く日本人も含めた外国人は多いようです。
今回はそんなポーランドの英語について、
・何故ポーランドには英語が使える人が多いのか?
・いつから、どのように英語を習っているのか?
・ポーランド人の英語にはどんな特徴があるか?
を中心に、いつも筆者の質問に答えてくれているポーランド人のカットに聞いてみました。
★カットへの他のインタビュー記事★
「非常に高い」ポーランドの英語レベル
―いつもインタビューに付き合ってくれてありがとう。早速だけど、EFが出した非常に高い(11位)っていう結果をどう見る?
半分ビックリ、半分「まぁ、そんなもんか」って感じ。
まず、なんでビックリしたかって言うと、私は都市部に住んでいて、私の友人の多くは英語が流暢に話せるけど、田舎に行けば、英語に触れる機会は私たちより少ないだろうと推測するから。
私は学校の授業とは別でも英語を習っていたけど、もしそれをしなければ、今自分が持てている高い英語レベルに達することはできなかったと思うわ。
―首都・ワルシャワや古都・クラクフだけではなく、中規模都市にも20代~30代の若い世代を中心に、英語を話すことのできるポーランド人は多かったから、私(筆者)は驚かなかったけどね。
そうね。だから、半分は反対に「まぁそんなもんよね」って思ったの。
英語に限らず、ポーランド人が外国語を話すことが得意なことに驚きはしないわ。3~4言語話す人なんてそこら中にいるし。
だって誰がポーランド語なんて話すのよ!変人じゃない限りポーランド語なんて学ばないわ(笑)
ポーランド人のパートナーがいるとか、ポーランド人の血がいくらか入っているとかでないと、「ポーランド語を学ぼう!」とはあまり思わないと思う。
「ポーランドに住みたい」とか言う人は、頭がおかしいわよ(笑)
―じゃあ住みたいって思った私は頭がおかしいわ。別に知ってたから傷つかないけど(笑)
あなたは別だけど(笑)
とにかく、何が言いたいかって、ポーランド語は難しい言語だとみなされることが多いし、英語やフランス語、スペイン語のように話者が多くはないの。
熱心に外国語を学ぶ背景
―ポーランドの人口って3800万人以上と、実はそこまで少なくないし、隣国、アメリカやイギリスなど、他の国にもポーランドにルーツを持つ人がいて、彼らもポーランド語を話す場合があるから、極端にレアな言語ではないんだけど、
ポーランド人としては「ポーランド語はあまり話されていないから、英語(外国語)を学んで話せるようにならなきゃ」って感覚なの?
▶参考データ: ポーランド基礎データ|外務省
あ~、ちょっと違うかな。
ポーランド語の難しさや希少さを知っているが故に「自分たちが外国語を話してあげなきゃ」って思う人も中にはいるけど、なんで「英語を話せた方がいい」と強く思うかには大きく2つの理由があると個人的に分析しているわ。
1つ目は、ポーランドは旧ソ連だから。
ポーランドは戦後からソ連崩壊までは社会主義国家だったこともあって、西側諸国と比べて「劣っている」と感じているふしがある。
自分たちがそう感じているだけではなくて、実際に他の国からポーランド(人)は「格下」「劣っている」とみなされていたし、今もそう。
※相対的な話です。世界中の全員が、又、西側と呼ばれる国々の方の全員が、上記のように思っているわけではありません。
東側の国だった上、多くの移民が西側の国々へ移住したんだけど、移住先でのポーランド人に対する評判は、全体的に決して良いと言えるものではなかったんだよね。
ポーランド人に対して「泥棒」みたいなレッテルが貼られていたの。
こういった背景から、「自分たちは劣っている」と思うコンプレックスがあって、
「優れた人間になって認めてもらう必要がある。もっと進んで西側の国に追いついて、認めてもらわないといけない。英語、フランス語、ドイツ語などの言語を上手く話せるようにならないと!」
みたいな感じで、ポーランド(人)全体的にこの「劣っている」コンプレックスがずーっとある。
あくまで私の意見だけどね。
―ポーランド語が難しいとかのどうのこうのというより、「外国語を上手に話せるようになることで、対等な立場に近づきたい。劣っていると思われたくない」って感じかな。
2つ目の理由は、他国へ移住したい人が沢山いるからかな。ちなみに私もそのうちの1人。
当然だけど、他の国で生計を立てようと思ったら、ポーランド語だけ話せてもダメよね。
★ポーランドの政治を知る★
ポーランドの英語教育
―あなたは3歳で英語を勉強し始めたけど、それは、ポーランドでは割と普通なこと?
ううん。今は4~5歳で幼稚園に行き始めるような年齢で英語を習い始めるのが普通だけど、15年位前までは違った。
だから、私には特権があったと言ってもいいわ。
実は、私の両親2人とも、2つの外国語を話せるから、娘の私も英語を話すべきだっていう家庭の教育方針で英語を3歳から習い始めたの。
ポーランド語がしっかりと書けるようになった10歳頃からは、学校以外でも英語のレッスンを受け始めたわ。1週間に1回、8年間ね。
それ以外にも、英語で映画やドラマを見て聞いて、英語に触れる機会を自分で作った。
―あなたと同学年の子たちで、同じように、学校以外でも英語を学んでいた人は、割合的にどのくらいいたか覚えてる?
そんなに多くなかったはずよ。
だいたい、学校教育を受けている間中ずっと英語の学校に行き続けていた人はほとんどいないと思う。語学の学校って高いのよね。
それに、教育熱心な親ばかりではないから、外部の学校でも教育を受けさせることを検討すらしていないことがあるしね。
覚えている限り、私の幼少期からの友人で1人だけ、私と同じように英語の学校に通っていた子がいたわ。
―他の多くのポーランド人はいつから、又、どんなプロセスで英語を学ぶの?
幼稚園では英語のクラスがだいたい週に1回ある。
クラスっていったってまだ幼いから、英語で歌を歌ったり、数字や色を言ってみたりする程度だけどね。
私の世代は、(日本でいう)小学校で正式に英語の授業が始まって、中学校からは、英語のクラスがベーシックとアドバンスに分かれた。高校でも同じ。
―ベーシックとアドバンスはどのくらいの比率で分けられたの?
ちょうど半分ずつくらいだったと記憶してる。
アドバンスの中にベーシックのレベルにかなり近い子も交じっていたけど。
―学校の英語の授業スタイルはどんな感じ?会話中心?文法中心?
私が覚えている限り、文法にかなり重きが置かれていたわ。あと、ライティングとリスニングも沢山やった。
スピーキングの時間が沢山あった覚えはないわね。
1クラスの人数が多すぎて先生がまとめられないことが、スピーキングの時間が少ない要因の1つだと考えるわ。
―ポーランドでも、日本のセンター試験みたいなマトゥラ(Matura)っていう試験があるけど、高校生になると英語に対しての意識は変わる?
確かに、高校生になってから、マトゥラへの準備・対策のために塾に行き始める人もいるけど、そういう塾は英語だけに特化して教えているわけではないね。
―マトゥラの英語の試験はどんな感じ?スピーキングテストもあるの?
ライティング、文法問題、語彙問題の他にスピーキングのパートがある。
スピーキングテストは、「元気ですか?」「将来は何をしたいですか?」みたいなウォームアップのための質問から始まり、絵を見て状況を説明する課題、与えられたトピックについて1~2分話す課題などに進んでいくわ。
―マトゥラのおかげもあるのかな。大学に進学している人の中に日常会話レベルができなかったポーランド人はいなかったように記憶してる。
大学を卒業する時には、英語以外でもいいんだけど、外国語教科でB2レベルをパスしないといけないしね。
まあ、B2(おおよそ英検準1級相当レベル)ってそんな高くないけど。
▶レベルのデータ: 各試験・検定試験とCEFRとの対照表|文部科学省
―いいえ、高いわよ。英語のB2レベルは留学するための最低条件だったりするから、英語で授業についていけるだけの語学力はあるってことになるじゃない。
もちろんC1以上のレベルを課す大学も中にはあるけど。
う~ん、でも、大学でも英語を外国語に選ぶ人は、大学を卒業する時点で、計15年も勉強していることになるから、そのくらいのレベルがないとおかしいわよ。
あと、小学校3年生からは、英語に加えて、第二外国語も取り始めるの。
だから、英語以外の第二外国語も大学でも続ける人は、計12年間、その第二外国語を学んでいることになる。
ただし、調べてみたんだけど、あまりデータがなくて、田舎の方でも同じ教育がされているかは定かではないわ。
―ポーランドでは、いつから今の方式で英語を学ぶようになったの?
正直、それは分からないわ。
ただ、私の親の世代はちょうどソ連だった頃に教育を受けた世代だけど、当時からポーランドに英語の語学学校はあったらしい。
ただ、学校教育で習ってたのは英語じゃなくて、ロシア語だったの。
―だから、今40代後半以上の人にはロシア語も話せる人が多いのね。
そう。その世代の人たちがロシア語を多少は知っているのと同じような感覚で、今の若い人にとって、英語を話すのは当たり前みたいな感覚があるわね。
だけど、旧ソ連のイメージがあまりにも強いのか、観光で来る外国人、特にアメリカ人が、ポーランド人の多くが英語を話せることにビックリするわ。
―ポーランド人はイギリス英語の方がアメリカ英語より聞きやすいの?
私の発音は、完璧ではないけど、アメリカ英語の発音に近いんだよね。
私の発音が悪かったせいもあると思うけど、時々聞き取ってもらえない単語があって、イギリス英語に寄せて発音すると理解してもらえることが、1度や2度じゃなかったんだ。
確かに学校ではイギリス英語の教科書が使われているし、スペルもイギリス英語で書くことが多いけど、あなたの英語が聞き取ってもらえないことがあったのはなんでだろうね。
学校ではイギリス英語を習うけど、ポーランドの一般家庭で観たり聞いたりするものには、アメリカの作品が多いのよ。
―興味深いわ。
ポーランドの学校ではイギリス英語を習っているけど、ポーランド人の多くは、どちらかと言うと、アメリカ英語の発音に近い英語で話すのね。
アメリカ英語の方がポーランド人にとっては発音しやすいのかもしれない。
英語でオランダを宣伝するポーランド人!?
―からかっている全く意図はないんだけど、ポーランド人が英語を話す時の特徴ってある?
まずね、英語を話す時に緊張している人が実は沢山いるの。
ポーランド語には「シュッ」とか「ジュ」のような音が多いから、それが英語を話す時にも出てくることがある。
さっきも言ったけど、「劣っている」コンプレックスがあるから、アクセントも含めて「上手く話せないと、笑われちゃうかな」って内心不安に思っている人が少なくないのね。
他によくある特徴としては、単語の間違った部分を強調したり。
―あ~、それは気づいていたかも。例えばFocusって単語だけど、本当は「フォーカス」って伸ばすんだよね。
でもポーランド人はよく「フォクス」のように発音をしてた。
それは、ポーランド語でFocusのスぺルを発音すると「フォクス」ってなるからだね。
面白いのが、自分たちの国名「ポーランド」を「ポランド」って「ポ」を伸ばさずに発音するポーランド人が多いから、他の国の人たちに「ホランド(=オランダ)」と勘違いされることがしょっちゅうあること。
―確かに「ポーランド人はオランダを世界中で宣伝しまわってる」ってジョークを聞いたことがあるわ(笑)
まとめ
質問に答えてくれたカットの話を筆者なりに簡単にまとめると、
- ポーランド人には、外国語を習得することに対し意識が高い人が多い。それは、ポーランド語が大国の言語ほど使用率が高くないことに加え、「下に見られたくない」「同等に扱われるためには、外国語の習得が不可欠だ」と思うに至る歴史的背景があると考えられる。
- ポーランド人の英語力の高さは、上記のような意識の他に、学習を始める年齢の低さと「試験をパスしなければ卒業・進学できない」というプレッシャーがあることによって担保されていると考えられる。
- ポーランド人にも、多くの日本人と同じように、英語を話すことに若干の緊張、恐れ、不安を抱えている人がいる。それは、発音、単語、文法など細かな間違いを意識してしまうことに起因していることが大概である。
となります。
個人的には、ポーランド人にも英語を話すことに恐れや不安、緊張を覚える人がいることが知れて良かったです。
まあ、考えてみれば当たり前なんですけどね。
ポーランド人だって日本人と同じように人間なのですから、苦手なことをする時には、緊張したり、不安になったりしますよ。
以上、ポーランドの英語事情についてでした。詳しく答えてくれたカットに改めて感謝します。
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