Dzień dobry!(ジン ドブレ・ポーランド語でこんにちは)
今回はポーランド人大学生のKat(カット)に、普段はじっくり話すことの少ないポーランドの性教育、性事情、差別等についてインタビュー形式で語ってもらいました。
▼カットにはポーランドの就職についてのインタビューに答えてもらったこともあります。
今回のポーランドのタブーに色々切り込むインタビューはかなりくなったので、前編、中編、後編に分けました。
前編は主に、ビクトリア・シークレットのショーにも起用された経験のあるポーランド出身のスーパーモデル、アニャ・ルービックが始めた#sexedplについてです。
そこから派生して、ポーランドでの性教育、セクシュアリティ、現政権の政策についても突っ込んでいきます。
日本でも同じかは分かりませんが、ヨーロッパでは2019年春、アニャ・ルービックがH&Mの広告に起用されています。
▲見にくいですが、写真右上のモデルがアニャ・ルービックです。
sexedpl、このアルファベットの羅列は一体!?
ーまず#sexedplとは何?
アニャ・ルービックはポーランドの性に関するタブー意識や性教育のあり方に疑問を持っていて、「もっと性について自由に話そう」「性の喜びを求めることはおかしなことじゃないよ」というメッセージを広めたくて#sexedplを始めたの。
もともとは彼女がSNS上で#sexedplというハッシュタグと共に始めたんだけど、書籍化にまで至ったの。
sexedはSex Education(性教育)のことで、plはPoland(ポーランド)。
▼sexedpl 関連動画
Anja Rubik - Remember about the condom #sexedpl
彼女は主に生理が始まったりや性的関心の高まる10代を主なターゲットとして始めたから、分かりやすい単語を使って丁寧に書いているわ。
本の中で、アニャ・ルービックは質問者に徹していて、回答者は性に関する団体のメンバーが多いわ。
彼女は単にモデルって訳ではなく、ロールモデルそのものね!
ーKatは全体的にこの#sexedplの本には前向きな意見ってことでいいかな?
この本のターゲットは主に10代の子たちだから、多くの新しいことをこの本から学んだってわけではないけど、性別も年代も関係なく、誰が読んでも面白いと思うところがあるはずよ。
性差別・性被害
ー特に気に入った内容はあった?
私のお気に入りは2つね。
1つは性被害についての部分ね。どのように対処すべきか、もしレイプされてしまったら何をすべきか、どこに助けを求めたら良いかなどについて丁寧に分かりやすい言葉で書いてあったわ。
あと、これはポーランド特有の問題だと思うのだけど、ポーランドの医師には妊婦健診をしたがらない人がいて・・・。
ーどういうこと?お腹に子どもがいるかどうか検査しないってこと?
それもだし、子どもが元気かどうか、成長具合はどうかとか・・・。
ポーランド語にKlauzula(クラウズラ)という約款を意味する言葉があるの。
Klauzula sumieniaは良心的条項という訳になるのだけど、宗教を、良心を言い訳にして、本来ならば提供しなければならない検査や処方箋や避妊薬を拒否する医師や薬剤師がいるんだよね。
ポーランドでの避妊はほぼ不可能に近いからそれはまた別のレベルで話すべきなのだけど、緊急避妊薬1つを得ることもポーランドではとても大変なの。
この#sexedplの本では緊急避妊薬が正しく処方されなかった場合に自分にはどんな権利があるのか、どのように対処すれば良いかまでしっかりと書いてあったわ。
これは今回読んだ内容で私にとって一番大きな学びだった。
Znaj swoje prawa (Know your rights) というタイトルの章に書いてあったわ。
セクシュアリティ
ーお気に入りが2つあると言ったよね。
もう1つはポーランドのLGBTQコミュニュティーについて書いてある章ね。
ポーランドではLGBTQのあらゆることについてオープンに話すのがまだまだ簡単なことではないの。
これが私の興味を惹きつけたのは個人的な理由もあると思っていて、私の親友2人が同性愛者なのね。
私自身もasexualといって同性・異性問わず他人に性的感情が沸かないセクシュアリティを持っているのかもしれないと思っているところなの。
この#sexedplでは心の性、身体の性、恋愛感情などについても威圧感のない言葉と構成で書かれていて、とても読みやすかった。この本にこれらが書いてあると思わなかったから、見つけられて嬉しいわ。
ーこの本をもっと若い時に読めていたらなぁと思う?
強くそう思うわ。学校教育ではこういった性被害にあった時の自分の持つ権利やLGBTQに関することは一切学ばなかったから。
ポーランドの性教育
ー学校での性教育を覚えてる?どんな感じだった?
私が覚えている限り、(日本でいう)小学校と中学校で性教育を受けた覚えは全くないわ。既に生理が始まっている子や、既に性体験を持った子もいたんだけどね・・・。
(日本でいう)高校ではedukacja seksualna w liceumという名前の授業があったわ。Preparing to start a familyが主なテーマだった。
でも、そのクラスでもセックスについての話はあまり取り扱われなかったな。
ごめんね、正直言うと、このクラスについてもあまり覚えてないの(笑) 何習ったんだっけ?って感じ(笑)
セックスについては1度だけ習ったのを思い出したわ!男女分かれての授業だったけど、私たち女子生徒は生物学者から教わったわ。
女子だけのためのクラス、男子だけのためのクラスって徹底して分けられた。
生殖機能についてその生物学者から習ったのは覚えているけど、それ以外でセックスについてはおろか、性について学校で教えてもらった記憶はないわね。
私が高校を卒業した後、教育制度が変わったのは知ってるわ。私の経験はもう6年も前のことだし。
でも保守的な現政権がより性に対してオープンな教育方針にしたとは思わないな。もしかしたら私が高校にいた頃より“悪く”なってるかも(笑)
ーカット世代の若者はポルノやインターネット、友だちや年上の人からセックスについての情報を得てるのかな?
その通り。個人的な経験を話すと、私の家ではセックスはタブーな話題で誰一人として一切口に出さなかったわ。
ー授業のテーマがPreparing to start a familyってのが皮肉的ね。男女分けたらFamilyが1組もできないじゃないの(笑)
本当にそう。繰り返しになるけど、高校卒業時にすら、私は税金の払い方も、1人の人間を育てるのに必要な資金とか、生きる上で必要な知識を一切知らなかったわ。
まぁ、政府は子どもにいくらかかるかなんて教えたがらないでしょうけど(笑) そんなことしたら誰も産まなくなってしまうからね(笑)
現政権の500+ 政策
子どもの話に関連して、ポーランドの現政権は500プラスと言って、子ども1人につき毎月500ズウォティ(約15000円)与える政策を取っているの。
ー1人につき500ズウォティって十分な額なの?
もちろん500ズウォティだけでその子の生活全てが賄えるわけではないけど、家計の助けになることは間違いないね。
ただ、この政策が成功かには疑問が残るわ。私が見た統計では、現政権がこの政策を取り始めてから出生率が格段に上がってはいないどころか、下がっているの。
ポーランドの政治についてこちらから!
前編はここまでです。中編はポーランドの低用量ピル、緊急避妊薬事情について掘り下げていきます!
▼【中編】緊急避妊薬・低用量ピル・避妊方法の選択
▼【後編】容姿差別、性差別、社会にはこびる差別